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メルクリンとミニチュア模型制作の専門店
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(プライザーのルーツ)
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土地には似つかわしくない重厚かつ近代的な社屋をしばし見上げ、インターホンを押すとガチャッとキーが解除された。秘書らしき女性に二階の個室に通された。らせん階段は大理石造り(写真5)で外観に劣らない。窓からは通りを一本隔て民家が見える...
そこに社長であるVolker Preiser氏が現れた。簡単な挨拶をかわすと早速、社内を案内してくれると言う。廊下から展示室のある地下室に続く階段壁面に創業当時のプライザー作品が展示されている。
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プライザー創業者は現社長の祖父にあたるPaul M Preiser氏、社名そのままである。創業は終戦から2年後の1947年、当時1/83スケールで木の削出し人形、いわゆる工芸品で生計を立てた事が始まりだった。ここにプライザーの原点となる作品を見た。木を荒く削り出したものを順次彫込み整えていき完成させる。(写真6-7)面白いのは、腕となる部分に真横から穴が開けられ数珠のようにヒモを通す。これを適度な長さに切断して腕にしていた。これは生産効率をあげる目的と腕のポーズを自由に変えられる一石二鳥の工法(写真8-1)だった。着彩して完成(写真8-2)となる。すでにこの時代「ジオラマにおけるフィギュアの可能性」を意識していた事がこの作品から伺い知れる。(写真9)
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しかし当時はまだまだ工芸品的な作風で決してレアリズムを追求したものはなかった。二代目、Horst Preiser氏(現社長の父)に受継がれ彼が晩年にさしかかった頃、メルクリン社から精度の高い1/87HOゲージが次々と発売される。このセンセーショナルがプライザーを刺激した。鉄道模型レイアウトの先見性と需要を適格にとらえたのだ。鉄道模型がリアリティ溢れるものになる一方で、必然的にプライザーも鉄道模型のスケールに合わせ、レアリズムを追求するに至るのだった。
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(近代的かつ合理化された司令塔)
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階段を降りるとそこは広大な展示室になっていた(写真10)主に取材用に作られたとの事だが、実に効率よく来訪者を案内出来るよう工夫されている。美術館の引率者のごとくプライザー氏は一点ずつ丁寧に作品にコメントしてくれる。長年プライザー製品は、あるターニングポイントまで一貫してこの地で生産され続けてきた。元来(旧)西ドイツ兼とあって賃金が高くリアリティを追求した新しいフィギュアづくりには大変な労力がかかり、価格が高騰するのが避けられなかった。それをおさえる手段として、1956年に合理化改革が実施された。
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原形以降の工法を樹脂量産化とし、ペイント工程までを海外に外注(今で言うアウトソーシング)したのだ。その地はアフリカ大陸の東にある小さな島、モーリシャス島。当時QC(クオリティチェック)は大変だったいうがこれを軌道に乗せる事に成功。この改革でプライザーは急激な発展を遂げる。バリエーションも次々に増え、建築模型分野からの制作依頼も舞込むようになる。こうして現在の18スケールと膨大なバリエーションを扱うに至った。現代の不況下においてもプライザーブランドが強い背景には、作品クオリティはもちろん、経済成長期まっただ中に現代に劣らない改革を実施した功績なのだ。現在では商品開発、マスター制作、商品ストック、デリバリーを本社で行ない、生産部門を一貫してモーリシャスで行なっている。
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(写真10)プライザー博物館?
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(現地職人のペイント技)
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私はどのようにしてあの精細なペイントが行なわれているかが知りたかった。ペイント全てはモーリシャスの黒人女性によって行なわれている。プライザー氏はタヌキ毛の極細の筆を示してくれた。額に入れられた現地スタッフの写真には総勢40人以上はいたろうか、学校の教室のごとく整然と並べられた机に山程のフィギュア...それだけでもゾッとする。高精細のタンポ印刷やマスキングプレートの限界を越えた手塗りペイント、それがプライザーのもう一つの生命線でもある。もっとも元来モーリシャスの女性に合っていた仕事なのかもしれない。しかし「流石に1:220スケールになると皆、嫌がるんだよね」と氏は笑っていた。
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(膨大な展示レイアウトと膨大なストックヤード)
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展示作品の説明は続く。鉄道模型レイアウトはもちろん、中世時代のジオラマ、動物シリーズ、プライザーの全てのカテゴリーに対する参考作品が美術館のように続いている。それらすべてを説明し尽くせないが、ともかくあきれる程のフィギュアバリエーションに驚かされる。(写真11-16)これらはドイツ各地で開催されるメッセにも活用されるとあってストラクチャーも細部まで完璧な仕事がなされている。(写真17)
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